入札・経審・監査で評価されるのは、現場力だけでなく取引の適正さです。
本稿では、建設業法／下請代金法に沿った契約書の必須条項・支払サイト・減額禁止・出来高精算の運用を、差戻しや是正指導を避ける順で整理します。すぐ使える契約書チェックリストと運用テンプレ付きです。

H2: まず押さえる法令の射程（Know）

建設業法：書面（電子含む）での契約・変更契約の交付義務、不当な減額・やり直し負担の禁止、支払期日の明確化などを規定します。

下請代金法：元請の書面交付・支払遅延・減額・返品などの不当行為を禁止します。特定建設業か否かに関わらず注意が必要です。

実務の核心は、**「契約書に書く→現場で守る→証拠が残る」**の三点セットです。

H2: 契約書の必須条項（Do）

工事名・場所・内容（仕様・数量）・工期・請負代金（税抜/税込・内訳）

支払条件：出来高／出来形・締日・支払日・振込手数料負担

設計変更・追加減額の手順：協議→見積→変更契約（電子可）

材料支給・機械・安全衛生・品質検査・引渡しの責任分担

瑕疵担保／保証：範囲・期間・上限

再下請の可否・要承諾

紛争解決：協議→調停→管轄裁判所

電子契約の場合は、宛先・署名者・タイムスタンプを必ず残します。

H2: 支払サイトと減額禁止（Do）

支払期日は、検査合格日または引渡し日から60日以内が目安、遅くとも120日以内を上限とする取り決めが無難です。

一方的な減額・やり直し負担の転嫁は原則禁止です。やむを得ない減額は、原因・範囲・金額根拠を明記した合意書で行います。

出来高払いを採用する場合は、出来高算定方法・検査日程・小計の支払期日まで条項化します。

H3: 文例（支払条件）

甲は、乙の出来高検査合格分につき、毎月末日締め翌月末日支払（銀行振込）とする。検査合格日の属する月に計上する。振込手数料は甲の負担とする。

H2: 変更契約・設計変更の運用（Do）

現場指示→見積→協議→変更契約→施工の順序を守ります。

口頭指示で先行した場合でも、当月内に書面（電子）で追認し、通し番号でひも付けます。

写真・出来形・図面差替えを変更契約番号で束ねると後日の説明が容易です。

H2: 価格転嫁・インボイス・原価の見える化（Know/Do）

仕入・資材の単価上昇は、**見積内訳（材料・労務・経費）**に反映させ、発注者へ根拠資料（相見積・価格改定通知）を添付します。

**適格請求書（インボイス）**では、税率・税額・登録番号の記載漏れが減額・支払遅延の火種になります。請求テンプレで標準化しましょう。

工期延伸時は、現場管理費の増加（共通仮設・現場常駐）を協議・書面化します。

H2: 再下請・一人親方の取り扱い（Do）

再下請は契約で可否・承諾要件を明記。技能者の社会保険・CCUSの運用を条件に入れます。

一人親方は請負の成果責任と精算方法を明示し、雇用と誤解されない条文（指揮命令・就業時間の指定を避ける）を入れます。

H2: 提出・監査に耐える“証跡フォルダ”構成（コピペ可）

01_契約：基本契約／個別請負契約／変更契約（通し番号）

02_見積・内訳：初回見積・再見積・単価根拠

03_出来高・検査：出来高計算書・検査記録・出来形写真

04_請求・支払：請求書（インボイス）・支払通知・振込明細

05_協議・議事：協議書・議事録・往復書簡（メール含む）

99_差替え一覧：何を／いつ／どの版へ差替え

H2: よくあるNGと回避策（Know/Do）

口頭指示で先行、変更契約が後追い

回避：当月内追認・通し番号管理・写真と図面を変更契約番号で束ねる。

検査合格後も支払期日が曖昧

回避：契約書に締日・支払日・出来高算定方法を条項化。

一方的な手直し負担

回避：原因・範囲・金額を協議書で合意。瑕疵か設計変更かを区別。

インボイス記載漏れ

回避：請求テンプレ（税率・税額・登録番号・適用工期）を固定化。

再下請管理の空洞化

回避：再下請届・協力会社台帳と社会保険・CCUSの確認ルールを契約条件に。

H2: 契約書チェックリスト（現場で使える版）

工事名・場所・仕様・数量・工期・請負代金（税抜/税込）が記載

支払条件（出来高・締日・支払日・手数料負担）が明記

設計変更・追加減額の手順（協議→見積→変更契約）が条文化

出来高算定・検査の方法と記録が定義

再下請の可否・条件（承諾要件・社会保険・CCUS）を記載

保証・瑕疵担保・保険の範囲・期間・上限を明示

紛争解決条項（協議→調停→管轄）あり

電子契約の署名者・タイムスタンプが残る

インボイス要件（税率・税額・登録番号）に適合

H2: テンプレ（抜粋・そのまま使えます）
H3: 変更協議条項（例）

設計変更、追加又は減少が生じた場合、甲乙は書面により協議し、別紙見積書に基づき契約金額及び工期を変更する。変更内容は変更契約書により確定し、当該契約書の締結前に施工した部分についても当月内に追認する。

H3: 出来高精算条項（例）

月次出来高は、当月末日現在の施工数量に基づき乙が作成した出来高計算書及び写真帳をもって甲が検査し、合格分を翌月末日までに支払う。

H2: FAQ（よくあるご質問）

Q. 追加工事を先にやってと言われます。先行施工は可能ですか。
A. 緊急時を除き原則は不可です。やむを得ず先行する場合でも当月内の追認契約と出来高証拠を残してください。

Q. 材料高騰の転嫁が認められません。
A. 相見積・メーカー通知・指数推移等の根拠を添え、変更条項に基づく協議書で記録を残します。

Q. インボイスに慣れていません。
A. 請求テンプレ化が早道です。税率・税額・登録番号・適用工期・工事件名・検査合格日を固定項目にしましょう。