- 所長コラム
業種区分の“取り方”と工事実態の合わせ方|一式・専門の選定、元請/下請でブレない許可戦略
入札で勝ち筋を作るには、許可業種の組み合わせを実態に合わせて最適化することが重要です。
本稿では、一式工事と専門工事の考え方、自社の工事実態との整合、元請/下請の戦略的な取り方を、提出書類の作り方と一緒に解説します。
H2: 一式工事と専門工事の考え方(Know)
一式工事(建築一式/土木一式)
複数工種を総合的に企画・指導・調整して完成させる工事の“総合管理”。
自社で全工種を直接施工する必要はありませんが、工程・品質・安全の統括能力が問われます。
専門工事(とび土工、管、電気、舗装、内装仕上など)
特定の工種を中心に施工する形。同種性の明確な実績が武器になります。
実務の肝
「一式を取りたい=何でもできる」ではなく、元請として統括した実態を証憑で示せるかが勝負です。
H2: 自社の“現在地”を3指標で把握(Do)
契約形態の比率:元請/下請の割合、単独・JVの比率
工事内容の内訳:金額ベースで主要工種の構成(例:電気40%、管30%、内装20%、その他10%)
統括能力の証拠:工程・品質・安全・コストの総合管理記録(会議録、施工計画、出来高、検査)
これらを1枚の「業種診断シート」にして、狙う入札の要件と見比べると意思決定が早くなります。
H2: “取りたい業種”を決める判断軸(Do)
入札要件との合致:過去の公告・参加資格の工種要件を収集し、頻出業種×規模帯を優先。
供給体制:自社で施工/協力会社で補完の境界を定義。常勤技術者や資格保有者の確保状況。
粗利構造:利益が出やすい工種のボリュームを経歴書上で厚く見せられるか。
将来像:1〜2年後に一式へ拡張するのか、専門を重層化するのかのロードマップ。
H2: 一式を“通す”ための実務(元請志向)(Do)
総合管理の証憑を厚く
施工体制台帳、工程表、品質計画、安全衛生計画、定例会議録、変更協議、出来高、検査成績。
下請管理の実態
発注・出来高・評価の記録、**法定書類(下請代金支払期日・適正取引)**の運用。
工事経歴書の書き方
工事件名に複数工種の統括が伝わる記述(例:「庁舎改修(建築一式:電気・管・内装統括)」)。
専任技術者のルート
1級施工管理技士などの資格ルートが王道。常勤性3点(社保・給与・就業場所)の期間整合は必須。
H2: 専門を“厚くする”ための実務(下請・直施工志向)(Do)
同種性の明確化
契約→台帳→出来高→写真→検査の一本線で、対象業種の中核作業と数量を示します。
資格者の見える化
資格者証(両面)+業種対応表で、どの現場にどの資格者が関与したかを一覧化。
体制の連続性
体制変更時は代替配置の辞令+社保手続を同日付で行い、変更届の期限を守ります。
H2: 失敗しない“組み合わせ”の作り方(Do)
基本セット
例:建築一式+(電気/管/内装仕上)
例:土木一式+(舗装/とび・土工/鋼構造物・塗装)
穴の塞ぎ方
主要工種の協力会社マップを整備し、CCUS/社会保険/適格請求書の運用を標準化。
年度計画
今年:専門を2業種追加→来年:一式申請、のように段階計画で評点と実績を積み上げます。
H2: 申請パッケージ(コピペ可)
01_会社基礎:登記事項(履歴付)/定款(目的)/商号・住所マスター
02_営業所実体:賃貸契約・固定電話・標識・内部写真・帳簿保管
03_経営業務(経管):登記履歴・分掌規程・決裁権限・金融交渉記録
04_専任技術者:資格者証(両面)or 実務経験束/常勤性3点(社保・給与・就業場所)
05_工事経歴:狙う業種の同種性が強い案件を優先/契約→台帳→出来高→検査→請求の一本線
06_CCUS・社会性:CCUSの運用概要、適用事業所通知・被保険者台帳
07_補足:表記統一チェック、差替え一覧、目次PDF(通し番号連動)
H2: よくある差戻しと回避策(Know/Do)
工事件名が抽象的で同種性が伝わらない
回避:仕様・数量・主要機器を短文で追記(例:VP管400m、AHU×3)。
一式志向なのに統括の証拠が薄い
回避:会議録・体制図・変更協議の記録を前面に。現場写真は指揮側の視点も入れる。
専任の空洞化
回避:代替配置の辞令+社保手続を同日付でセット。
表記ゆれ
回避:登記表記をマスターに全半角・ハイフンまで統一、一括置換で整える。
PDF品質不足
回避:300dpi・両面一体・パスなし、通し番号・目次を付与。
H2: 提出前チェックリスト(現場で使える版)
入札の頻出工種×規模帯に自社業種が合っている
工事経歴が狙う業種の同種性で厚く揃っている
専任技術者の資格 or 実務ルート+常勤性3点が同期間で整合
一式を狙う場合の統括証憑(工程・品質・安全・会議録)が十分
協力会社マップと社会性(保険・CCUS・適格請求書)が整備済み
表記統一・PDF品質・通し番号・目次・差替え一覧を完了
H2: FAQ(よくあるご質問)
Q. 一式と専門を同時に取りに行くのは無理ですか。
A. 体制次第で可能です。まず専門を厚くして同種性を固め、一式は統括証憑の整備と資格者の確保を優先します。
Q. 実績が分散していて“厚み”が出ません。
A. 年度ごとの重点工種を決め、経歴書の並べ方で柱を作ります。写真・出来高・検査の密度で補強しましょう。
Q. 途中で方針転換しても大丈夫ですか。
A. 可能です。体制変更の橋渡し資料(辞令・社保・変更届)と工事経歴の見せ方を整えれば問題ありません。