- 所長コラム
財産的基礎の確認と“落とし穴”|許可審査で止まらないための実務ガイド
建設業許可では、財産的基礎(支払能力・自己資本・欠損の状況 等)の確認が重要です。
本記事では、審査で見られる観点、準備すべき証憑、経審を見据えた整え方、そして**差戻しの“落とし穴”**を実務目線で解説します。読み終えるころには、どの資料をどの順番で揃えればよいかが明確になります。
H2: 財産的基礎とは何を指すのか(Know)
許可審査で確認される主な観点を整理します。
自己資本の状況(資本金・資本剰余金・利益剰余金等の合計)
欠損の有無・程度(債務超過か否か)
支払能力の裏づけ(預金残高、借入金の返済状況 等)
直近期の決算内容の健全性(継続企業の前提に疑義がないか)
想定されるご質問
「赤字でも許可は取れますか?」
「自己資本が少ない場合にできる対策はありますか?」
H2: 準備すべき証憑と整え方(Do)
基本セット
直近期の決算書一式(貸借対照表・損益計算書・注記等)
法人税・消費税の納税証明(未納がないことの証明)
残高証明書(金融機関発行、提出直前の日付が望ましい)
借入契約書・返済予定表(長短区分が分かるもの)
実務の整え方
勘定科目内訳書を用意し、仮受金・未払金の内容を説明できるようにします。
役員借入金・役員貸付金の多寡はチェックされます。相殺や契約整備で関係性を明確にします。
**在庫(材料・仕掛品)**は棚卸方法と根拠を示し、金額の妥当性を担保します。
H3: 表記・数値の“ズレ”を防ぐコツ
申請書・決算書・登記の商号・住所・代表者名の表記を統一します。
決算期日と納税証明の対象期間を揃えます。
合計と内訳の突合(円単位までの整合)を提出前にダブルチェックします。
H2: よくある“落とし穴”と回避策(Know/Do)
落とし穴1:債務超過のまま提出
回避策:増資・資本準備金の取り崩し・役員借入の資本化等を検討します。手続きの前後関係と証憑を整理します。
落とし穴2:未納税・分納中の説明不足
回避策:納税証明(その1・その2等の区分)を確認し、分納中は納付計画書・履行状況を添付します。
落とし穴3:短期借入の集中と資金繰りの不透明さ
回避策:資金繰り表(3~6か月)を用意し、運転資金の見通しを示します。不要債務の整理を検討します。
落とし穴4:棚卸・売掛・未成工事支出金の裏づけ不足
回避策:棚卸リスト・評価方法、売掛金年齢表、工事別管理台帳で金額の実在性を明確にします。
落とし穴5:役員貸付金の多額計上
回避策:回収計画と社内規程を整備します。経審も見据え回収・相殺を検討します。
H2: 指標の見方と“整えどき”(Know)
押さえておきたい指標(例)
自己資本比率:自己資本/総資本
流動比率:流動資産/流動負債(100%以上を目安に改善を検討します)
インタレスト・カバレッジ:営業利益+受取利息等/支払利息
整えどき
決算確定前:評価性引当・棚卸評価・不良債権処理の方針を検討します。
許可申請前:残高証明の取得日、納税証明の取り寄せをスケジュールに組み込みます。
経審前:自己資本の厚み、有利子負債の見直し、保険加入状況を併走で整えます。
H2: ケース別の実務対応(Do)
H3: 赤字決算が続いている場合
継続企業の注記があると審査で重く見られます。
資金繰り改善策、金融機関の支援姿勢の書簡、役員報酬見直しなどを資料で示します。
H3: 期中で資本増強を実行した場合
払込証明書・通帳写し・増資手続書類を添付し、決算書との橋渡し説明を用意します。
H3: 個人事業から法人成り直後
個人期の貸借対照表・工事台帳・請求書を整理し、事業承継の同一性を簡潔に説明します。
H2: 提出前チェックリスト(テンプレ)(Do)
決算書:直近期・前期比較で債務超過の有無を確認しましたか。
納税証明:区分・期間・氏名(商号)の表記一致を確認しましたか。
残高証明:提出直前日付で発行できていますか。
借入一覧:返済予定表と合致していますか。
棚卸・売掛金:内訳と根拠資料を整えましたか。
役員借入・貸付:相殺・契約整備・回収計画を示せますか。
表記統一:商号・住所・代表者名の字形/全半角/ハイフンを統一しましたか。
H2: 経営規模等評価(経審)を見据えた整え方(Know/Do)
財務の健全化は**評点(財務指標)**に直結します。
短期:不良債権の整理、在庫の適正化、役員貸付の回収計画
中期:自己資本強化(増資・利益蓄積)、借入の長短最適化
長期:利益体質の改善(原価管理・入札戦略)、内部統制と社会性の充実
H2: FAQ(よくある質問)(Know)
Q. 赤字でも許可は取得できますか。
A. 可能な場合があります。債務超過でないこと、支払能力の裏づけ、改善計画の妥当性等を資料で示すことが大切です。
Q. 納税を分納中でも大丈夫ですか。
A. 分納自体は直ちに不可ではありませんが、分納計画と履行状況の資料を添付し、滞納状態でないことを明確にします。
Q. 残高証明はどの時点のものが良いですか。
A. なるべく提出直前の日付のものが望ましいです。審査期間中に大きく変動しないよう資金繰りも併せて準備します。
まとめ(次アクション)
本日行うこと
決算書・納税証明・残高証明の取得スケジュールを確定します。
借入一覧・返済予定表・棚卸リスト・売掛年齢表を最新化します。
債務超過や役員貸付が大きい場合は、増資・相殺・回収計画の方針を決めます。