- 所長コラム
前の勤務先が倒産・廃業したとき、実務経験と経営経験をどう証明するか
会社に勤めていた時代や、会社の役員だった時代の経験を使って、建設業許可を取りたい。ところが、その会社はすでに倒産・廃業している。この記事では、このような場合に経験をどう証明するかを、国の基準と大阪府・兵庫県の公式資料に沿って整理します(2026年10月14日時点の公式資料に基づきます)。
実務経験と経営経験は別の要件
建設業許可の要件のうち、技術者の要件と経営体制の要件には、経験によって満たす方法があります。この記事が扱うのは、その場合の証明です。
- 実務経験:営業所技術者等(以前は専任技術者と呼ばれていました)の要件を、実務経験によって満たす場合に必要です。実務経験証明書(様式第9号)で証明します。資格によって要件を満たす場合など、実務経験の証明が要らない申請もあります。
- 経営経験:経営業務の管理を適正に行う体制の要件を、常勤役員等の経営経験によって満たす場合に必要です。常勤役員等証明書(様式第7号)で証明します。この要件には、ほかの満たし方もあります。
2つは別の要件です。建設業法施行規則は、どちらの証明書も「使用者の証明書」としています。証明書も、内容を裏付ける資料も、それぞれ別に用意します。
「誰が証明するか」と「何で裏付けるか」を分けて考える
前の勤務先が倒産・廃業している場合、確かめることが2つあります。
- 証明者:証明書に誰が記名するか。
- 確認資料:証明書の内容を、何の書類で裏付けるか。
兵庫県の「建設業許可に係るQ&A」は、この2つを別の問いとして扱っています。そして、証明書の記載内容を裏付ける確認書類を提出しなければ、許可を受けることはできないとしています。大阪府の手引きも、要件を満たしているかどうかは、必要な確認書類を準備できるかが最終的な判断になるとしています。証明者が決まっても、確認資料がそろわなければ許可は受けられません。
証明者:原則は当時の勤務先
国土交通省の「建設業許可事務ガイドライン」は、証明者を、原則として使用者(法人の場合は代表者、個人の場合は本人)としています。兵庫県のQ&Aも、他社での経験は、在職していた当時の法人または個人事業主が証明するとしています。
会社が倒産・解散している場合の取扱いは、資料によって書き方が違います。
| 資料 | 倒産・解散している場合の取扱い |
|---|---|
| 国土交通省のガイドライン | 法人が解散等している場合は、証明を受ける人と同等以上の役職にあった者を証明者にできる。それらの者の証明も得られない正当な理由があり、やむを得ず自分で証明する場合は、理由を記載し、必要な場合は第三者の証明書等を添付する |
| 兵庫県のQ&A | 以前勤めていた会社が倒産した場合など、正当な理由があるときは、理由を記載し、当時の代表取締役(個人)に証明をもらう |
| 大阪府の手引き | 常勤役員等証明書について、原則として証明者の記名が必要。申請者自身や他者が証明できる場合があるため、事前に問い合わせる。証明を有効と認められない場合もある |
この表を読むときの注意点が3つあります。
- 国土交通省のガイドラインは、国土交通大臣に係る許可事務の取扱いとして、国土交通省が地方整備局などにあてて示したものです。兵庫県の手引も、実務経験の考え方などの説明で、このガイドラインを参照先として挙げています。一方、知事許可の審査で証明者や確認資料をどう扱うかは、各府県が手引きやQ&Aで示しています。ガイドラインの記載が、そのまま府県の取扱いになるとは限りません。
- 兵庫県のQ&Aには、「同等以上の役職にあった者」による証明や、自分で証明する方法についての記載がありません。
- 大阪府の手引きの上の記載は、常勤役員等証明書(経営経験)についてのものです。実務経験証明書について同じ記載があるかは、確認できていません。
連絡が取れない、頼みにくい場合
公式資料が取り上げているのは、倒産や解散など「正当な理由」がある場合です。関係が悪く証明を頼めない、連絡が取れないといった事情が正当な理由に当たるかどうかは、確認した公式資料には書かれていません。倒産の場合と同じ扱いになると考えて準備を進めることは避け、申請先の窓口に事情を伝えて確認してください。
確認資料:大阪府と兵庫県の取扱い
前の会社が建設業許可を受けていたかどうかで、府県の資料が挙げる確認資料が変わります。
兵庫県
実務経験の内容を確認する資料について、兵庫県の3つの資料は書き方がそれぞれ違います。
- Q&A:「主な確認資料」として、証明者が建設業許可を有している(いた)場合は、決算変更届の表紙と工事経歴書の写し(期間分)を挙げています。有していない場合は、工事請負契約書、工事請書、注文書等の写し(期間分)です。
- 手引:実務経験に必要な期間分として、工事請負契約書・請求書・注文書(各年ごとに1件以上。日付、受注者、発注者、工事名、工事内容、請負金額が明記されたものに限る)と、決算変更届出書の表紙(受付印あり)・該当業種の工事経歴書を挙げています。前の会社が許可業者だったかどうかによる区別は書かれていません。
- 確認資料について(お知らせ):実務経験者の確認書類として、工事請負契約書、注文書、請求書(必要期間分、各年ごとに1件以上)を挙げています。決算変更届は挙げていません。
前の会社が許可業者だった場合に、決算変更届と工事経歴書だけで足りるのか、工事請負契約書等も必要なのかは、これらの資料からは確定できません。管轄の土木事務所に確認してください。
実務経験の内容のほかに、次の資料も挙げられています。
- 経営経験:手引は、経験期間に係る建設業許可通知書と、建設業許可申請書の控えを挙げています。法人の役員の場合は、登記事項証明書(閉鎖事項証明書など)も確認されます。
- 当時の在籍:原則として、年金事務所の被保険者記録照会回答票などで確認されます。
これらの資料は例示とされており、追加の書類を求められることがあります。
大阪府
大阪府の手引きは、過去に許可を受けていた建設業者での経験について、本人がその会社で過去に証明を受けていたかどうかで書類を分けています。
- 実務経験:過去に実務経験で営業所技術者等として証明されていた場合は、そのときの許可申請書または変更届の一部(受付印のある表紙と実務経験証明書など)です。証明されていない場合の書類の一つに、決算変更届の一部(表紙等と、証明期間に相当する工事経歴書)があります。
- 経営経験:過去に常勤役員等として証明されていない法人の役員の場合は、建設業許可通知書(経験年数分)、決算変更届の一部(直近分)、役員だった期間の商業登記簿謄本(役員欄の閉鎖謄本等)などの組み合わせが示されています。
大阪府の手引きは、記載のない書類の提示を求める場合があるとしています。
当事務所で取り扱った事例
次の事例は、担当行政書士の実務経験に基づくもので、行政庁の一律の審査基準ではありません。
以前、大阪府で建設業許可を取得していた会社が倒産し、その後、時間を置いて兵庫県で新たに会社を設立された方の建設業許可申請を取り扱ったことがあります。
この案件では、倒産した大阪府の会社の過去の建設業許可申請書類などを活用することで、実務経験と経営経験の両方を証明し、新しい会社で建設業許可を取得することができました。
ただし、これは個別の申請事例です。過去の許可申請書類があれば必ず経験を証明できるというものではありません。証明者の取扱いや必要な確認資料については、申請先の行政庁に確認する必要があります。
手元に控えがない場合
前の会社の許可申請書、許可通知書、決算変更届の控えが手元にあれば、確認資料の候補になります。ただし、手元に控えがないことだけで、申請ができないと決まるわけではありません。
- 兵庫県の手引は、確認資料を例示としています。在籍や常勤性の確認資料については、示された書類に該当しない場合は個別に管轄の土木事務所に相談するよう求めています。
- 大阪府の手引きは、常勤役員等の経営経験についてのFAQで、許可申請書や決算変更届の副本を紛失等の理由で持参できない場合は、受付時に申し出るよう求めています。
一方で、裏付けの確認書類を提出できなければ、許可は受けられません。控えがない場合に、ほかのどの資料で確認できるのか、控えをどうすれば入手できるのかは、確認した公式資料には書かれていません。申請先の窓口に相談してください。
自分の個人事業での経験を証明する場合は「一人親方の実務経験はどう証明する?確定申告書・請求書・通帳の確認ポイント」をご覧ください。
前の勤務先の証明で迷っている方へ
前の勤務先が倒産・廃業していて、経験を証明できるか分からないという方もいらっしゃいます。
おおぞの行政書士事務所では、大阪府・兵庫県の建設業許可申請について、手元に残っている資料から実務経験や経営経験を証明できる見込みがあるかを確認しています。
一人親方や小規模建設業者の方も、お気軽にご相談ください。
お問い合わせはこちらから
おおぞの行政書士事務所
電話:06-6421-8445
メール:ozono.works@gmail.com