- 所長コラム
一人親方の実務経験はどう証明する?確定申告書・請求書・通帳の確認ポイント
建設業許可を受けるには、営業所ごとに技術者(営業所技術者等。以前は専任技術者と呼ばれていました)を置く必要があります。資格や指定学科の卒業などがない場合に、この要件を満たす方法の一つが「10年以上の実務経験」です。一人親方が自分の個人事業での経験を証明するとき、大阪府と兵庫県では確認される資料が違います。この記事では、その違いを中心に整理します(2026年10月9日時点の公式資料に基づきます)。
「実務経験」と「経営経験」は別の要件
許可の申請では、2種類の経験が確認されます。
- 実務経験:営業所技術者等の要件です。建設業法第7条第2号ロは、許可を受けたい業種の工事について10年以上の実務の経験を求めています。
- 経営経験:常勤役員等(経営業務の管理責任者等)の要件です。同条第1号に基づくもので、必要な年数も確認資料も実務経験とは別に定められています。
どちらも自分の個人事業での経験で証明する場合、同じ請求書や確定申告書が両方の確認に関わります。ただし、求められる書類と期間は別々です。この記事が扱うのは実務経験です。
実務経験の数え方は、国土交通省の「建設業許可事務ガイドライン」に示されています。技術上の職務経験を指し、見習いは含まれますが、雑務だけの経験は含まれません。期間は携わった工事の期間を積み上げて計算し、重なる期間は原則として二重に数えません。確認に使う書類は、申請先の府県が手引きで示しています。
大阪府と兵庫県の違い
次の表は、自分の実務経験を自分で証明する場合について、両府県の手引きの記載を比べたものです。
| 項目 | 大阪府(令和8年3月改定版) | 兵庫県(令和8年3月) |
|---|---|---|
| 工事の書類 | 証明書に書いた代表的な工事のすべて | 必要期間分、各年ごとに1件以上 |
| 書類の種類 | 契約書・注文書・請求書・内訳書等 | 工事請負契約書・請求書・注文書 |
| 必要な記載 | 工期・工事名・工事内容・請負金額 | 日付・受注者・発注者・工事名・工事内容・請負金額 |
| 確定申告書(実務経験の確認) | 手引きに記載なし。当事務所の取扱事例では提出を求められたケースあり(詳細は本文参照) | 手引に記載あり。実務経験期間分(第一表・第二表) |
| 通帳 | 手引きに記載なし | 請求書だけの場合に求められることがある |
どちらの手引きも、記載のない書類や追加の書類を求める場合があるとしています。手引きに書かれた資料と、実際の審査で求められる資料は、同じとは限りません。
大阪府:工事の間隔に条件がある
大阪府では、実務経験証明書(様式第9号)に各年の代表的な工事を書き、そのすべてについて書類を提示します。手引きは、各年の代表的な工事と翌年の代表的な工事との間隔が「1年以上とならないように」と求めています。1年以上空いた場合は、その間に行った同じ業種の別の工事の実績を確認されます。
- 令和3年8月の工事の次が令和4年6月の工事(間隔10か月):条件の範囲内です。
- 令和4年6月の工事の次が令和5年9月の工事(間隔15か月):1年以上空いているため、その間の別の工事の書類を確認されます。
間隔がちょうど1年になる場合の扱いは、窓口で確認してください。経験期間の最初と最後の工事については、工期が確認できる書類を用意します。年間を通じた経験がない年は、工事1件ごとに期間を積み上げます。経験期間中の在籍を示す書類は、証明する人と申請する人が同じ場合は原則不要とされています。
確定申告書:手引きの記載と、当事務所の実務経験
手引きの記載:自分で証明する場合の実務経験の確認書類として、確定申告書は挙げられていません。
当事務所の実務経験:当事務所が過去に取り扱った大阪府への申請では、一人親方が自身の実務経験を証明する際に、確定申告書の提出を求められたケースもあったと記憶しています。これは担当行政書士の実務経験に基づく情報であり、大阪府の一律の審査基準ではありません。
すべての申請で確定申告書が求められるとは言えませんが、手引きに記載がないから不要とも言い切れません。大阪府に申請する一人親方の方は、準備の段階で、確定申告書の控えが何年分残っているかも確認しておくことをお勧めします。
これとは別に、経営経験の確認では、手引きが個人事業主に所得税の確定申告書第一表と工事の契約書・注文書・請求書等を求めています。こちらは経営経験のための書類で、必要な年数は経営経験をどの基準で証明するかによります。実務経験の年数と同じとは限りません。
兵庫県:確定申告書が実務経験の確認資料として明記されている
兵庫県の手引は、実務経験者の確認資料を次のように示しています。
- 工事請負契約書、請求書、注文書を各年ごとに1件以上。日付や請負金額など、上の表の6項目が明記されたものに限る。
- 提出書類が請求書だけの場合、受注金額の確認が必要と判断されると、通帳の写し等を求められることがある。
- 個人の場合、実務経験期間の在籍確認として、税務署に提出した所得税確定申告書(実務経験期間分、第一表と第二表)。
- 証明書には、受注実績が確実に確認できる工事だけを書く。
個人の確定申告書に受付印や受信通知が必要かどうかは、手引の個人の欄に記載がありません。法人の欄には、令和7年1月以降の確定申告は受付印が不要との記載があります。個人も同じ扱いかどうかは確認できていないため、管轄の土木事務所に確認してください。申請先は、主たる営業所の所在地を所管する土木事務所です。
実務経験のほかにも要件がある
実務経験が証明できても、それだけで許可を受けられるわけではありません。両府県の手引きは、ほかに次の要件を挙げています。
- 経営業務の管理を適正に行う体制があること
- 適切な社会保険に加入していること
- 請負契約について不正・不誠実な行為をするおそれがないこと
- 財産的基礎または金銭的信用があること
- 欠格要件に該当しないこと
大阪府の手引きは、建設業の営業を行う事務所を有することも要件に挙げています。
なお、電気工事や消防施設工事のうち、電気工事士免状や消防設備士免状等を持つ者でなければ直接従事できない工事については、免状等を持つ者として従事した経験に限り、実務経験の期間に算入されます。すべての工事に一律に適用されるわけではないため、工事内容や免状の取得時期を確認する必要があります。会社に雇われていた期間の経験は、元の勤務先による証明が必要です。証明が得られない場合は「実務経験が証明できない場合の対策」もご覧ください。
請求書や確定申告書が十分に残っていない方へ
建設業許可を取得したいものの、過去の請求書や確定申告書が十分に残っていないという方もいらっしゃいます。
おおぞの行政書士事務所では、大阪府・兵庫県の建設業許可申請について、手元に残っている資料から実務経験を証明できる見込みがあるかを確認しています。
一人親方や小規模建設業者の方も、お気軽にご相談ください。
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